さまざまな連携による最適な医療の実践

医療連携の概要

患者さん一人ひとりの症状に合った適切な医療を提供するために、病院、診療所、クリニックといった各医療機関は、それぞれが持つ機能によってさまざまな役割を担っています。慶應義塾大学病院も国や自治体から「特定機能病院」「地域がん診療連携拠点病院」といった役割の指定を受けています。

例えば、「特定機能病院」の役割として、一般の医療機関では実施することが難しい高度な専門医療を必要とする患者さんや、病気が進行中の急性期の患者さんの治療に取り組んでいます。この場合、基本的に他の病院や診療所から紹介を受け、受診していただくことになります。また、継続的なフォローアップなど、患者さんにとって地元の医療機関の方が通院に適切な場合、紹介元の医療機関へ再び紹介する(逆紹介と称されます)こともおこないます。

当院と地域の医療機関は、さまざまな体制で連携を深めています。例えば、地域の中核医療を担う医療機関として「関連病院会」があり、より高度な医療が必要な場合の連携を担っています。また、地域の診療所・クリニックとの間では、「医療連携協力医療機関」(現在約800)を募り、より結びつきの強い連携を行っています。また、卒業生組織である「三四会」とも従来のネットワークを生かした連携を行っています。

さまざまな連携体制

当院の医療連携

当院と地域の医療機関をつなぐ重要なインフラとして、2012年電子カルテ導入と同時に、地域医療機関との連携強化・医療情報の共有化を目指し、「IT連携」を導入し、医療機関とオンラインでの紹介状の送付や、検査データなどの共有化を行っています。また院内での取り組みとして主に以下の3つを柱をとして業務を行っています。

1.地域医療機関とのシームレスな連携のための仕組み

  • かかりつけ医(逆紹介の充実)
    • 医療連携協力医療機関の患者への紹介 専用カウンター・専門スタッフ配置
  • 退院・転院調整(退院後の医療機関との連携)
    • 専門部署(医療連携推進部)でMSWや看護師による質の高い調整を行っています。

2.円滑な紹介受診のための仕組み

  • 予約センター地域医療機関からの初診予約
    • 予約専用のコールセンターを設置し、常時15名以上のスタッフが電話対応をしています。
    • 電話予約のほか、WEB予約、FAX予約、IT連携予約にも対応しています。

3.信頼ある連携のための仕組み

  • 紹介状の返書管理
  • 紹介状問い合わせ対応
    • 紹介に対する返書の管理や、緊急時の診療情報提供問い合わせなど、専門のスタッフを配置して常時対応しています。

具体的な取り組み

(1)予防医療センターの役割 「早期発見とフォローアップで受診者の生涯無病を目指す」

2012年8月、慶應義塾大学病院の一部門として予防医療センターを開設しました。人間ドックの実践を通じて予防医療を推進し、質の高い検査で早期発見に努めています。2013年度は802件を院内の他診療科に紹介しており、より専門的な検査や診断に繋げています。また、経過観察等の所見は主に予防医療センター外来で行い、2013年度は1130件の精査を行いました。院内の連携に留まらず、受診者の希望によって、かかりつけ医との連携なども積極的に行ってきております。さまざまな連携によるフォローアップの充実を通じて、受診者の生涯無病を目指していきます。

予防医療センターの特徴

人間ドックの問合せ・予約は予防医療センターWebサイトでも可能です。
http://cpm.hosp.keio.ac.jp/

(2)腫瘍センターの役割 「これまでの生活と外来から入院そして退院後の生活まで、患者さんへのサポート体制」

従来のがん治療では、がん患者さんの診療において、どの診療科を受診すべきかわかりづらい、いろいろな診療科をまわらなければならない、検査や治療方針の決定に時間がかかる等の問題点がありました。これらの問題点を解決するため、がんの迅速かつ正確な診断、最適な治療計画の策定、診療科の枠を超えた包括的ながん医療を提供することを目的として、腫瘍センター「がん専門初診外来」を開設しました。ここでは、患者さんが専門医の外来をまわるのではなく、患者さんを中心としてがんの専門家が集まり治療にあたります。

(3)PET検査について 「がんの発見・治療に欠かせないPET検査を他院より受託」

がん検査の充実を推進すべく、PET-CTを2012年8月から大学病院3号館(南棟)に新しく導入してきております。PET検査は関連病院はじめ他の医療機関からの検査依頼も受託しており、担当もしくはかかりつけ医を通じての予約で、検査が可能となっております。また、慶應義塾大学病院予防医療センターの人間ドックの基本コースにおいても、PET検査を盛込んだ「スーパーがん検診ドック」として、活用されています。

(4)医療連携推進部の役割 「これまでの生活と外来から入院そして退院後の生活まで、患者さんへのサポート体制」

医療連携推進部は外来通院中から退院まで患者さんに寄り添ってサポートします。

病気や怪我を抱えている患者さんは、誰もが様々な心配や治療上の不安を抱えて入院されると思います。
特に慶應義塾大学病院は特定機能病院であるため、高度な先進医療を必要とする患者さんが通院や入院をされています。そのため入院治療終了後も引き続き医療管理や医療処置の継続が必要となる場合もあり、ご自身の病気と向き合いながら生活していくことが重要になります。

医療連携推進部では、外来通院中から退院まで様々な心配や治療上の不安を抱えて入院する患者さんやご家族の相談に対応します。そして慶應病院で治療を適切な期間で受けられた後に、安心して自宅療養ができる環境を整えるサポートをいたします。また、他医療機関や施設と連携をとって、患者さんにとってより適切な治療を受けられる病院や施設への転院調整をお手伝いいたします。
このように、『外来通院中から退院・転院そして退院後の療養環境整備まで一貫したサポートを様々な職種が連携してシームレスに患者さんへ提供すること』これが医療連携推進部の役割です。

外来通院中の患者さんへのサポート

  • 外来スタッフと連携し、患者さんの通院中の経済面の不安や療養上の問題に対応します。
  • 入院が決まりましたら、看護師が治療の準備のための面談を行っています。治療を受ける上で不安に思っていることなどご相談ください。
    • 現在、面談は一部診療科のみで行っております。
  • 入院が決まりましたら、薬剤師が治療に向けて現在内服されているお薬の内容をお聞きするために面談を行います。外来受診時は必ずお薬手帳など現在内服されているお薬がわかるものをご持参ください。

入院治療終了後、自宅で生活するための調整

  • 病棟スタッフと連携し、不安なく退院後の生活が送れるよう専門知識を持った看護師やソーシャルワーカーがサポートします。
  • 地域のケアマネージャーなどと連携して、訪問診療・訪問看護・訪問介護など必要なサービスの選定を行い、療養環境を整えるお手伝いをします。

転院や療養場所の選択

  • 体調等の問題などで自宅での生活が難しい場合は、患者さんやご家族のご希望を伺いながら、病状や介護状況にあった病院や保険介護施設などを選定するお手伝いをソーシャルワーカーや専門的知識を持った看護師が行います。

入院について