ロボット支援手術センターの取組み
慶應義塾大学病院は、2020年に開院100年を迎えましたが、この100年以上もの間、常に我が国における手術治療の進歩を牽引してきました。ロボット支援手術センターはこれまでの伝統を継承しつつ、圧倒的臨床経験をもつ各領域のスペシャリストがチームを組み、常に新しい医療をご提供します。
開腹手術が手術治療のゴールデンスタンダードであった中、1980年代に腹部に数か所穴を開けて、カメラや手術器具を挿入してテレビモニターを見ながら手術を行う腹腔鏡下手術が登場しました。その後1990年代に手術支援ロボットda Vinciが米国で開発され、2003年に慶應義塾大学病院に日本で最初に導入されました。ロボット支援手術は、腹部に数か所穴を開けて、ロボット本体と連動している内視鏡カメラと手術器具を体内に挿入して行う手術方法です。術者は患者さんから少し離れた操縦席で、3D画像を見ながらロボットを操作します。
日本において2012年にda Vinciによる前立腺全摘術が保険収載され、ロボット支援手術が急速に普及しました。ロボット支援手術の利点としては、まず患者さんの負担軽減が挙げられます。小さな傷で手術が行えるため、術後の痛みが少なく回復までの期間が短くてすみます。また気腹といって二酸化炭素を注入して広げたお腹のスペースの中で手術操作を行うため、二酸化炭素の圧力により出血が抑えられるといったメリットもあります。最大の特徴は、手術精度の高さです。術者はたとえ体の奥底であっても、内視鏡カメラを挿入し拡大された鮮明な3D画像で見ることができます。またロボット鉗子の先端の関節は人間の手首の関節よりも多く、人間の手では困難な動きが可能なうえ、手ぶれが補正された繊細な手術操作が可能となります。つまり患者さんにも術者にもメリットの多い手術であると言えます。
現在da Vinciの最新機器であるdaVinci Xiに加え、整形外科領域手術支援ロボットCori、国産初の手術支援ロボットhinotoriを導入し、泌尿器科、一般・消化器外科、産婦人科、心臓血管外科、耳鼻咽喉科、呼吸器外科、整形外科にて多くのロボット支援手術を行っています。
ロボット支援手術が手術治療のmain streamの一つとなった今、ロボット支援手術センターはこれまでの伝統を継承しつつ、安全かつ精度の高い超低侵襲治療を追求し患者さんにご提供いたします。
対象手術
泌尿器科 | 前立腺全摘術、副腎摘除術、根治的腎摘術、腎尿管全摘術、腎部分切除術、腎盂形成術、膀胱全摘術、仙骨膣固定術 |
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一般・消化器外科 | 食道切除術、胃切除術、膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術、肝切除(全術式)、結腸切除術、直腸切除術 |
産婦人科 | 子宮悪性腫瘍手術、子宮全摘出術、仙骨膣固定術 |
心臓血管外科 | 僧帽弁形成術 |
耳鼻咽喉科 | 鏡視下咽頭悪性腫瘍手術 |
呼吸器外科 | 肺悪性腫瘍手術、縦隔腫瘍手術、拡大胸腺摘出術 |
整形外科 | 人工膝関節置換術 |