臨床研究実施方針と被験者保護の徹底について

2016年03月03日

慶應義塾大学病院
病院長 竹内 勤


当院では、よりよい医療を実現するため、臨床研究に積極的に取り組んでおります。平素よりご支援を賜り、深く感謝申し上げます。

当院で行われた臨床研究において、被験者保護の観点から重大な倫理指針違反が確認され、2012年に公表いたしました。被験者の皆様にご説明の上、予め同意をいただくことなく、さらに、倫理審査の承認を得ることなく実施してしまったことは、決して許されない行為であったと認識しております。このことについて、重く受け止め反省するとともに、改めてご関係の皆様にお詫び申し上げます。

当院は、臨床研究に際してこのような問題を二度と繰り返さないために、さまざまな対策を講じてまいりました。この度、臨床研究実施方針を明文化し、臨床研究にご協力いただく皆様の人権保護を最優先に考え、事前に十分にご説明し、ご理解をいただいた上で、同意をいただくことを第一に掲げました。これを全ての病院職員に周知し、一人ひとりが自らの問題として受け止めるよう、繰り返し、徹底してまいります。

臨床研究は医療の安全性や有効性を明らかにするために必要不可欠であり、患者の皆様のご理解とご協力なくしては進めることはできません。私たちは被験者保護に加え、法令遵守、公正な研究活動、人材育成、社会還元を実施方針として掲げ、臨床研究に誠実に取り組んでまいります。

患者の皆様、被験者の皆様、広く社会の皆様方には、当院の取り組みに何卒ご支援を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。



○ 臨床研究実施方針
慶應義塾大学病院は、未来のよりよい医療のため、次の方針にもとづく臨床研究を行います。
1.被験者保護
  被験者の人権保護を第一優先に、十分に説明し、同意をいただく。
2.法令遵守
  法令・指針・社会規範等を遵守し、倫理と科学に立脚した研究を行う。
3.公正な研究活動
  気品の泉源・智徳の模範たる組織として、不正を容認しない。
4.人材育成
  未来の医療を拓く質の高い研究者、医療人を育成する。
5.社会還元
  研究成果の実用化を推進し、他施設の臨床研究を積極的に支援する。


○ 2012年以後の臨床研究適正実施のための主な取り組み
• 臨床研究実施方針の周知徹底を行いました。
• 研究倫理に関する教育研修を必修化しています。
• 2012年10月より第三者機関による臨床研究の倫理指針適合性の監査を導入しています。
• 2012年10月より臨床研究管理システムを導入し、医療者間による被験者に関する情報共有体制を構築し、運用しています。
• 2012年12月に生命医科学倫理監視委員会を設置しました。そして、臨床研究の適正実施のための情報周知、相談、指導体制の充実のため、各部署に委員を配置しています。
• 倫理委員会事務局の人員体制を強化しました。