病院長の挨拶

病院長 松本 守雄

―次の100年に向けて慶應義塾大学病院は歩みを進めています―

慶應義塾大学病院は2020年に開院100年を迎え、次の100年に向かって歩みを進めています。
当院は2018年に新病院棟1号館が本格稼働し、2号館・3号館の改修を進め、2022年5月にはエントランス棟と外構も整備され、グランドオープンいたしました。このような新しい環境下で患者の皆さんに医療を提供できますことは、私ども教職員にとりましても大きな喜びです。初代病院長である北里柴三郎博士は医学部開校・大学病院開院式において「各科の分立を防ぎ、基礎医学と臨床医学の連携を緊密にし、学内は融合して一家族の如く、全員挙(こぞ)って医学の研鑽に努める」ことを目標に掲げました。当院ではこの精神を100年以上にわたり脈々と受け継いできました。外来、病棟においては31の診療科が互いの垣根を無くし、すべての職種が協力して患者の皆さんにチーム医療を提供しています。治療が極めて困難ながん、免疫、神経、運動器、感覚器、遺伝などの難治性疾患に対しては複数の診療科の専門家チームからなるクラスター部門が高度な医療を行っています。

2023年度は、外来では年間延べ86万人(一日平均3,188人)、入院で30万人(一日平均836人)の患者さんを治療させていただきました。手術センターでは、高難度の手術に対応可能な医療機器を備えた25室で16,742件(うち全身麻酔8,782件)の手術を行っており、その中にはがんに対するロボット手術、臓器移植、経カテーテル大動脈弁留置術をはじめとする血管内治療などの先進的な手術も含まれます。救急センター、手術センターおよび集中治療センター(ICU、HCU)は専用エレベーターで直結され、密に連携した高度急性期医療を提供しています。新生児、小児ICUも整備し、無痛分娩も導入するなど周産期・小児医療にも力を入れています。さらに多くの関連病院や医療連携協力医療機関と連携をしながら地域医療に貢献するとともに、東京都災害拠点病院として巨大地震やテロなどの災害時に地域の医療救護活動の拠点となるべく常に備えをしております。
当院は特定機能病院として高度で安全な医療を提供するとともに、豊かな人間性と深い知性を有する医・看・薬の医療人の育成を行っています。また、私学では最初となる臨床研究中核病院に認定され、基礎医学と臨床医学部門が密に連携しながら日本発の革新的医薬品・医療機器の開発に向けて質の高い臨床研究を推進しています。さらに、がんゲノム医療中核拠点病院、地域がん診療連携拠点病院として遺伝子パネル検査に基づくがんゲノム医療などのがん診療を提供しています。2018年には内閣府戦略的イノベーション創造プログラムのAIホスピタルモデル病院に採用されました。さまざまな企業と連携し、AI、ロボット、センサー技術を用いて患者さんに先進的な医療サービスを提供するとともに、業務効率化による医療従事者の負担軽減に取り組んでいます。

2023年11月からは麻布台ヒルズに予防医療センターを拡張移転し、新時代の予防医療を提供し、必要な場合はスムーズに慶應義塾大学病院で治療を行い、丁寧にフォローアップを行う一気通貫の診療体制を開始いたします。

当院は「患者さんに優しく患者さんに信頼される患者さん中心の医療を行う」ことを理念の最初に謳っています。患者の方々からいただくさまざまな声を真摯に受け止めながら、すべての教職員が一丸となって安全で質の高い医療を提供するとともに医学の発展に貢献してまいります。

病院長 松本 守雄


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