子宮内膜刺激術

実施診療科 産婦人科
承認年月日 2022年9月1日
適応症 不妊症(卵管性不妊、男性不妊、機能性不妊又は一般不妊治療が無効であるものに限る。)

主な内容

先進性

生殖補助医療における反復不成功例のなかに、形態良好胚を移植しているにもかかわらず妊娠にいたらない着床不全症例が存在します。着床不全の原因のうち、子宮および卵管側の器質的要因として子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜症、子宮奇形、卵管水腫などが挙げられますが、一方で、機能的要因として性ステロイドホルモンや胚因子の刺激に対する子宮内膜の反応異常に起因する胚受容能の異常などが考えられています。
これらのうち胚由来因子の欠如または減少による子宮内膜の胚受容能の低下に起因する着床率低下を改善する方法として二段階胚移植法が考案されましたが、少なくとも胚を2個移植するため多胎の問題を回避することはできず、近年、単一胚移植が推奨されるようになってきました。しかし、単一胚移植を行う場合は、二段階胚移植法のように胚と子宮内膜の相互作用を利用することができないため、この問題を克服するために新たに考案された方法が子宮内膜刺激胚移植法(SEET法)になります。
胚培養液上清には子宮内膜胚受容能促進に関与する胚由来因子が存在することが報告されているため、胚培養液上清を子宮腔内に注入することにより子宮内膜が刺激を受け、胚受容に適した環境に修飾される可能性があると考え、胚盤胞移植に先立ち胚培養液上清を子宮腔内に注入する方法として考案されたのが子宮内膜刺激胚移植法です。

概要

体外受精により作出された受精卵を体外で5~6日間培養し、得られた胚盤胞は一旦凍結保存します。この際に体外培養に使用された培養液を、胚盤胞とは別の容器に封入した後に凍結保存しておきます。
胚盤胞移植(凍結融解胚移植)は自然排卵周期またはホルモン補充周期で行います。 自然排卵周期の場合は、月経開始10日目頃より数回の診察を経て排卵日が確定すれば、排卵後2~3日目に培養液を子宮内に注入し、さらに排卵後4~5日目に凍結保存した胚盤胞を1個融解して移植を行います。
ホルモン補充周期では、月経開始2日目から卵胞ホルモン製剤の投与を開始し、月経12~14日目の診察でホルモン値や子宮内膜厚の確認後、問題なければ月経15日目より黄体補充を開始します。黄体補充開始後2~3日目に、培養液を子宮内に注入し、さらに黄体補充開始後4~5日目に、凍結保存しておいた胚盤胞を1個融解して移植を行います。
排卵または黄体補充開始後15日目頃に血中hCGを測定し妊娠判定を行います。

効果

従来の胚盤胞移植に加えて行うことで、妊娠率の向上が期待されます。