内視鏡的胃局所切除術

実施診療科 腫瘍センター
承認年月日 2022年11月1日
適応症 胃粘膜下腫瘍(長径が一・一センチメートル以上であり、かつ、三センチメートル以下のものに限る。)

主な内容

先進性

現在、胃粘膜下腫瘍に対する標準治療は、開腹または腹腔鏡下の外科切除です。しかし、胃壁外からのアプローチでは局所切除が困難な噴門・幽門近傍の病変の場合、胃の切除範囲が大きくなる可能性があります。また本邦では、腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)も開発され、2014年に本手術は保険収載されています。LECSの最大の利点は病変部を必要最小限の範囲で切除できることで、噴門・幽門近傍の病変でも胃切除を回避することができることにありますが、一方で胃小弯の病変では小網(胃壁外の血管や迷走神経等)の切除が必要になります。
近年海外を中心に本邦でも胃粘膜下腫瘍に対して経口内視鏡で腫瘍を切除した後、腹腔鏡を用いずにそのまま閉創する術式(内視鏡的胃局所切除術)の治療成績が報告されており、経口内視鏡のみですべての治療を完遂できれば、腹腔鏡を併用する場合に比べて胃壁の損傷を最小化できるため、臓器機能の温存という観点からも好ましいことが考えられています。

概要

全身麻酔下に経口内視鏡で胃内から病変を切除します。内視鏡の操作部分から挿入した電気メスで病変周囲の粘膜切開を行った後、腫瘍の筋層付着部を露呈させ、筋層を切開して胃壁の全層切除を行うことで病変を切除します。腫瘍が筋層浅層までに位置している場合は胃壁に穴を開けずに腫瘍を切除します。開けた穴はクリップや留置スネアを用いて閉鎖します。

効果

腹部切開創がまったくない低侵襲治療が期待されます。胃腔内からアプローチすることで胃壁の損傷は最小限になるため、開腹や腹腔鏡手術では局所切除が困難な噴門・幽門近傍の病変において胃切除を回避できることや、胃小弯の病変において胃壁外に存在する迷走神経を切除しないために胃の排出障害などの機能低下が起こらないことが期待されます。