リンパ浮腫診療センター
概要
リンパ浮腫は、先天的な原発性(一次性)と発症原因が明らかな続発性(二次性)に分けられます。婦人科癌や乳癌などでリンパ節郭清や放射線治療に発症する続発性リンパ浮腫は術後患者の約30%に発症する後遺症です。リンパ浮腫は患者さんに苦痛を生じ、生活の質(QOL)を低下させる切実な問題であり、適切な生活指導や治療が重要です。我が国では10~ 15万人のリンパ浮腫患者が存在し、リンパ節郭清を伴う手術の実施とともに毎年約6,000人増加すると推測されています。しかし、リンパ浮腫の診断・評価・治療を専門的に実施している医療機関は数少ないのが現状です。
リンパ浮腫診療センターでは、関連する診療科の多職種のメディカルスタッフが集結し、リンパ浮腫の診断から保存的・外科的治療まで、質の高い診療を実践しています。
特色・方針・目標
原発性・続発性リンパ浮腫の確定診断のためには、全身性浮腫や静脈性浮腫の除外診断とともに、リンパ管機能の評価が必須です。従来、リンパ管シンチグラフィーや蛍光リンパ造影が実施されてきましたが、光超音波イメージング装置(慶應発ベンチャー:株式会社Luxonus、慶應義塾大学病院光超音波イメージングプロジェクト)やMRLymphography(放射線診断科)等の革新的技術を導入して、精度の高い診断方法の確立を目指しています。
治療においては、従来の保存的治療としてのリンパ浮腫複合的治療とともに、手術治療(リンパ管静脈吻合術)にも取り組んでいます。
対象疾患は次のようになっております
次のような症状を扱っております
生まれつきの手や足のむくみ
がん治療(リンパ節郭清をともなう手術は放射線治療)後や外傷後の手や足のむくみ
検査内容のご案内
- リンパ管シンチグラフィー
- 蛍光リンパ造影
- MRLymphography
- 光超音波イメージング
- 超音波検査
- ペロメーター
医師紹介
氏名 | 写真 | 職位 | 専門領域 | 認定資格等 |
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辻 哲也 | 教授 リンパ浮腫診療センター長 |
腫瘍リハビリテーション医学 リハビリテーション医学全般 |
日本専門医機構リハビリテーション科専門医 日本リハビリテーション医学会指導医 日本臨床神経生理学会専門医 |
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貴志 和生 | 教授・診療科部長 | 形成外科一般 乳房再建 悪性腫瘍切除後再建 外鼻再建 母斑・血管腫 瘢痕・ケロイド 褥瘡・難治性潰瘍 |
日本形成外科学会 理事長 日本創傷治癒学会 理事 日本創傷外科学会 評議員 日本レーザー医学会 理事・認定医 形成外科手術手技研究会 理事 日本シミュレーション外科学会 理事 日本頭蓋顎顔面外科学会 評議員 日本抗加齢医学会 評議員 International Wound Journal (Blackwell) Editorial Advisory Board |
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野崎 太希 | 准教授 | 骨軟部画像診断 小児画像診断 MRI診断学 |
医学放射線学会認定 放射線診断専門医・指導医 | |
鈴木 悠史 | 特任助教 | 形成外科 | 日本形成外科学会専門医 | |
藤村 直樹 | 助教 | 一般・消化器外科 血管外科 | 日本外科学会認定外科専門医 日本血管外科学会認定心臓血管外科専門医 |
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高橋 麻衣子 | 助教 | 一般・消化器外科 乳腺外科 | 日本外科学会認定外科専門医 日本乳癌学会認定乳腺専門医 |
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増田 健太 | 専任講師 保険医長 |
婦人科腫瘍 臨床遺伝学 腹腔鏡・ロボット手術 |
日本産科婦人科学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 日本臨床細胞学会細胞診専門医 臨床遺伝専門医制度専門医 日本遺伝性腫瘍学会遺伝性腫瘍専門医 |
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石川 愛子 | 専任講師 | リハビリテーション医学全般 | 日本専門医機構リハビリテーション科専門医 日本リハビリテーション医学会指導医 日本臨床神経生理学会専門医 |
リンパ浮腫診療の流れ
当院では、担当科の医師、病棟・外来看護師が中心になって、乳がんの手術で腋窩リンパ節郭清および子宮がん、卵巣がんなどで骨盤内リンパ節郭清を行った患者さんに対して、術後のリンパ浮腫の概要を説明した上で、生活指導を行い、浮腫の発症予防や早期発見に努めています。
浮腫が出現した場合には、リンパ浮腫外来を受診していただき、リンパ浮腫診療専門の医師により、血液検査、超音波検査、蛍光リンパ管造影検査、リンパシンチグラフィーなどの検査を実施し、リンパ浮腫の診断や重症度の評価を行います。リンパ浮腫以外の原因による浮腫が疑われる場合には、血管外科や皮膚科など専門各科へ診察依頼を行います。
リンパ浮腫と診断された場合には、リンパ浮腫の病態、治療の説明後、必要な研修を終了したリンパ浮腫セラピストにより、生活指導および圧迫療法(弾性包帯による多層包帯法)と圧迫下での運動療法の指導を行います。外来通院の頻度は浮腫の程度や自己管理方法の習得度を考慮して決められます。その後は、弾性着衣(弾性スリーブ・ストッキング)の導入を検討します。弾性着衣はサンプル品を各種常備しており、実際に試着した上で購入していただきます。
手術療法
形成外科において、手術療法(リンパ管細静脈吻合術)を施行しています。手術では、浮腫によって拡張したリンパ管と、血管(静脈)とを顕微鏡で見ながら微細な操作でつなぎます。この操作により、うっ滞したリンパが血管内へ流れるので、浮腫の改善を図ることができます。術前・術後のケアについては、リハビリテーション科と連携して行っています。
専門外来
初診は下記外来にて受け付けています。
腫瘍センター がんリハビリテーション外来(月~金曜日)
形成外科 リンパ浮腫外来(木曜日)
連絡先
より詳しい情報は当部門の専用webサイトをご覧ください。
受診について
- 当院では患者さんの待ち時間を短縮するため、予約制を導入しています。
- ご予約方法は一般の患者さんと医療関係の方で異なります。